会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書
「東京電力株式会社に係る原子力損害の賠償に関する国の支
援等の実施状況に関する会計検査の結果について」
平
成
3
0
年
3
月
参議 院決 算委 員会 にお いて 、平成 24年8月27日 、国家 財政 の経 理及 び国 有財 産の 管理 に 関する調査のため、会計検査院に対し、東京電力株式会社に係る原子力損害の賠償に関す る国の支援等の実施状況について会計検査を行い、その結果を報告するよう要請すること が決定され、同日参議院議長を経て、会計検査院長に対し会計検査及びその結果の報告を 求める要請がなされた。これに対して、会計検査院は、同月28日、検査官会議において本 要請を受諾することを決定した。そして、当該要請により実施した会計検査の結果につい て は、 25年 10月 16日及 び27年3月23日 に会 計検 査院 長から参 議院議長 に対して 報告を行 っ たが、27年の報告において、28年度末に原子力損害賠償・廃炉等支援機構によって「責任 と競争に関する経営評価」が実施されることとなっていることから、その内容や廃炉・汚 染水対策の実施状況等を踏まえた上で、26年度以降に実施された支援等について引き続き 検査を実施して、検査の結果については取りまとめが出来次第報告することとした。
本報告書は、上記の引き続き検査を実施することとしたものに係る会計検査の結果につ いて、会計検査院長から参議院議長に対して報告するものである。
目
次
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
第1 検査の背景及び実施状況 1
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1 検査の要請の内容 1
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2 これまでの報告の概要 1
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
3 27年報告以降の動向 10
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (1) 国における東京電力の改革等に関する委員会の設置 10
‥‥‥‥‥‥‥‥ (2) 原子力災害からの福島復興を一層加速させるための閣議決定 11
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(3) 機構法の改正 14
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (4) 原子力災害対策本部による避難指示区域の見直し 16
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(5) 電力システム改革 19
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(6) 東京電力の分社化 20
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
4 検査の観点、着眼点、対象及び方法 21
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(1) 検査の観点及び着眼点 21
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(2) 検査の対象及び方法 22
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
第2 検査の結果 23
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1 原子力損害の賠償に関する国の支援等の状況 23
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(1) 国による財政上の措置等の状況 25
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ア 原賠法に基づく措置の状況 25
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
イ 国から機構に対する財政上の措置の状況 27
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ウ 福島県民健康管理基金に係る支出等の状況 36
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (2) 国による財政上の措置以外の支援等の状況 43
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ア 審査会及びADRセンターによる支援の状況 43
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
イ 機構法附則の検討条項に係る進捗状況 46
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ウ 電気事業会計規則の改正 48
‥‥‥‥‥‥‥ エ 託送料金による賠償費用の負担及び廃炉費用の捻出の仕組み 49
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2 機構による資金援助業務の実施状況等 52
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (1) 機構及び東京電力による特別事業計画の作成等の状況 52
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ア 特別事業計画の作成及び変更の状況 52
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
イ 経営評価の状況 58
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(2) 資金援助業務の実施状況 61
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ア 東京電力が発行する株式の引受け等の状況 61
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ア 機構への負担金の納付の状況 66
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
イ 機構からの国庫納付の状況 72
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ウ 交付した資金の回収に係る試算 73
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(4) 機構の決算等の状況 85
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ア 26、27、28各年度の決算 86
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ イ 28年度決算における契約関係業務の実施状況 86
‥‥‥‥‥ 3 東京電力による原子力損害の賠償その他の特別事業計画の履行状況等 88
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(1) 原子力損害の賠償の状況 88
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ア 損害項目及び賠償基準 88
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
イ 東京電力による賠償金の支払状況等 91
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (2) 特別事業計画に基づく東京電力の事業運営の状況 128
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ア 経営の合理化のための諸方策の実施状況 128
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
イ 収支見通しの状況 149
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ウ 金融機関への協力要請等 170
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (3) 福島第一原発の廃炉に向けた取組等の状況 175
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ア 福島第一原発の廃炉・汚染水対策の概要 175
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ イ 国による廃炉・汚染水対策に対する財政措置 184
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ウ 東京電力による廃炉・汚染水対策の概要 209
‥‥‥‥‥‥‥‥ エ 福島第一原発の廃炉・汚染水対策に係る東京電力の負担等 219
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(4) 東京電力の決算の状況 229
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ア 21年度以降の決算 229
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
イ 決算の状況 231
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
第3 検査の結果に対する所見 242
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1 検査の結果の概要 242
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2 所見 266
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別図表 271
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
別添 291
事
例
一 覧
[再処理等積立金について、再処理等に要する費用の見積りを適時に見直していない 事例]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<事例1> 168
[VRデータの作成に当たり、関連する事業間のスケジュールの設定や管理の在り方 について留意する必要がある事例]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<事例2> 197
[フェーシング工事の施工状況を踏まえて、引き続き保守点検を適切に実施していく 必要がある事例]
第1 検査の背景及び実施状況
1 検査の要請の内容
会計検査院は、平成24年8月27日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事
項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し
同月28日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその
検査の結果を報告することを決定した。
一、会計検査及びその結果の報告を求める事項
(一)検査の対象
内閣府、文部科学省、経済産業省、原子力損害賠償支援機構、東京電力株式
会社等
(二)検査の内容
東京電力株式会社に係る原子力損害の賠償に関する国の支援等の実施状況に
関する次の各事項
① 原子力損害の賠償に関する国の支援等の状況
② 原子力損害賠償支援機構による資金援助業務の実施状況等
③ 東京電力株式会社による原子力損害の賠償その他の特別事業計画の履行状
況等
2 これまでの報告の概要
上記の要請により、会計検査院は、東京電力株式会社に係る原子力損害の賠償に関す
る国の支援等の実施状況に関して、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点
から検査を実施し、25年10月16日に、会計検査院長から参議院議長に対してその検査の
結果を報告した(以下、この報告を「25年報告」という。25年報告の概要については29
1~297ページの別添参照)
そして、会計検査院は、25年報告に係る検査に引き続き、国の支援等はどのように実
施されているか、原子力損害賠償支援機構(26年8月18日以降は原子力損害賠償・廃炉等
支援機構。以下「機構」という。)による東京電力株式会社(28年4月1日以降は東京電
力ホールディングス株式会社。以下「東京電力」という。)への資金交付等はどのよう
て着眼するとともに、福島の復興・再生を一層加速させるために廃炉を安全かつ着実に
進め、特に汚染水対策については国が前面に出て取り組むなどの方針が25年12月に「原
子力災害からの福島復興の加速に向けて」として閣議決定されたこと(以下、この閣議
決定を「25年閣議決定」という。)などを踏まえて検査を行い、その検査の結果を27年
3月23日に、会計検査院長から参議院議長に対して報告した(以下、この報告を「27年報
告」という。)。
27年報告における検査の結果の概要は、次のとおりである。
(1) 原子力損害の賠償に関する国の支援等の状況
国が東京電力に係る原子力損害の賠償に関する支援等について財政上の負担等をし た額は、計4兆9002億余円となっている。このほか、国は、福島第一原子力発電所(以
下「福島第一原発」という。)の廃炉・汚染水対策に関して計1892億余円の財政措置 を講じている。
国は、機構に対して原子力損害賠償支援機構国庫債券(26年8月18日以降は原子力損 害賠償・廃炉等支援機構国庫債券。以下「交付国債」という。)9兆円を交付しており、 機構の請求に応じて26年12月末までに計4兆5337億円を償還し、機構を通じて東京電力
に対して同額を交付している。また、交付国債の償還のために借り入れるなどした借 入金等は計4兆5822億余円となっていて、これに係る支払利息は、今後、償還期限が到 来するものも含めて計106億2301万余円となっている。さらに、エネルギー対策特別会 計電源開発促進勘定(以下「促進勘定」という。)の平成26年度予算において、原子 力損害賠償支援機構法(平成23年法律第94号。26年8月18日以降は原子力損害賠償・廃 炉等支援機構法。以下「機構法」という。)第68条の規定に基づく機構への資金交付 に充てるために350億円が計上されている。
国による財政上の措置以外の支援等の状況についてみると、原子力損害賠償紛争審 査会(以下「審査会」という。)に設置された原子力損害賠償紛争解決センター(以 下「ADRセンター」という。)における23年9月から26年9月末までの和解の仲介の 申立てに係る取扱実績は、申立件数13,206件、処理件数10,408件となっていて、26年 9月末現在で2,798件が未処理となっている。また、機構法附則の検討条項に係る進捗
の賠償の実情等を踏まえながら必要な検討を加えていくこととしている事項もあり、 その検討の結果に基づく原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号。以下
「原賠法」という。)の改正等の抜本的な見直しなどの必要な措置を講ずるまでには 至っていない事項もある。
(2) 機構による資金援助業務の実施状況等
機構は、機構法の規定に基づき、東京電力と共同して、これまで数次にわたり交付 国債による資金交付の前提となる損害賠償の実施その他の事業の運営に関する計画
(以下「特別事業計画」という。)を作成又は変更し、主務大臣である内閣総理大臣 及び経済産業大臣に対して認定の申請を行い、両大臣の認定を受けている。そして、 26年8月に変更の認定を受けた新・総合特別事業計画においては、要賠償額の見通しが 5兆4214億3900万円となったことを受けて、資金交付額は、補償契約に基づき支払われ た1200億円を控除した5兆3014億3900万円となった。
機構は、機構法に基づく東京電力に対する資金援助の一環として、24年7月に、東京 電力が発行する株式を1兆円で引き受けている。そして、25年閣議決定においては、
「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事 故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平 成23年法律第110号。以下「除染特措法」という。)に基づき実施する除染・中間貯蔵 施設事業の費用については、復興予算として計上した上で、事業実施後に環境省等か ら東京電力に求償すること、交付国債の償還費用のうち、除染費用相当分(約2.5兆
円)は、機構が保有する東京電力の株式を売却することにより得られる利益の国庫納 付により回収を図ること、売却益に余剰が生じた場合は中間貯蔵施設費用相当分(約 1.1兆円)の回収に用いることなどが示されている。機構が引き受けた東京電力の種類 株式を全て普通株式に転換して売却等する場合、機構が全ての売却等までに得ること になる対価の額は平均売却価額に約33.3億株を乗じて得られる額となる。そして、除 染費用相当分(約2.5兆円)を株式の売却益で回収するには、平均売却価額が1,050円
となることが必要となる。
経常利益の大幅な上振れを受けて、運営委員会は26年4月21日にその額を500億円に変 更する議決を行い、主務大臣はこれを認可した。そして、機構及び資源エネルギー庁
は、それぞれのホームページにおいて、特別負担金に係る認可の事実のみを公表して いる。しかし、特別負担金の多寡が国民負担に影響を及ぼすものであることなどに鑑 みると、機構は、東京電力に対する国の支援の検討時における「国民負担の極小化を 図ることを基本とする」という考え方を踏まえつつ、特別負担金の額が東京電力に対 して「経理的基礎を毀損しない範囲でできるだけ高額の負担」を求めたものであるこ
とについて、各年度の額の算定に係る具体的な考え方を、東京電力の財務諸表上の計 数等、検討に際して考慮した諸要素を適宜用いるなどして、国民に対して十分に説明 する必要がある。
機構からの国庫納付の状況についてみると、機構は、25年度の当期純利益の全額に 相当する2097億8904万余円について、26年7月末と27年1月末に分けて国庫に納付して いる。25年閣議決定により行うこととされた機構法第68条の規定に基づく機構への資 金交付は、機構の収益を上積みして、専ら機構の損益計算を通じた国庫への納付額を
増加させる効果をもたらすことになり、この仕組みにより、この資金交付がない場合 と比較して、東京電力に特別負担金が課される期間が短縮され、また、その総額が減 少することになる。
会計検査院において、国が機構を通じて東京電力に交付した資金が、今後、どのよ うに実質的に回収されるかなどについて、資金交付額が交付国債の額である9兆円にな
るとして、また、特別負担金の額を新・総合特別事業計画における仮置きの額である 500億円とした場合又は経常利益(特別負担金控除前)の2分の1とした場合に分けて、 一定の条件を仮定して機械的に試算した。その結果、特別負担金の額を500億円とした 場合に9兆円の回収が終わるのは21年後の平成47年度から30年後の平成56年度まで、経 常利益(特別負担金控除前)の2分の1とした場合に9兆円の回収が終わるのは18年後の 平成44年度から25年後の平成51年度までとなった。そして、回収を終えるまでに国が
負担することとなる支払利息は、前者の場合で約1032億円から約1264億円まで、後者 の場合で約892億円から約1090億円までとなり、追加的な資金投入等が必要になる試算 結果となった。
(3) 東京電力による原子力損害の賠償その他の特別事業計画の履行状況等
ると、「個人」325万余円、「個人(自主的避難)」27万余円、「法人等」562万余円、 「団体」1億9441万余円となっている。そして、「個人」に係る賠償金の支払について、
4件、計109万余円の重複が見受けられたほか、「個人」及び「法人等」に係る賠償金 について、請求受付から支払までに2年以上の期間を要したものが見受けられた。
総合特別事業計画に基づく経営の合理化のための諸方策の実施状況についてみると、 25年度のコスト削減額は、目標額7862億円に対して、東京電力が算定して公表してい る実績額は8188億円となっている。しかし、この中には、コスト削減のための修繕工
事等の繰延べが外的要因によると認められるものなど、算定及び公表について今後留 意する必要のあるものが見受けられた。また、設備投資についてみると、東京電力は、 削減実績額が25年度の削減目標額1313億円を241億円上回る1554億円になったとしてい るが、設備投資削減額を原資とする投資の再配分については、柏崎刈羽原子力発電所 (以下「柏崎刈羽原発」という。)における工事が繰延べとなったことなどにより、 当初の計画額を大幅に下回る結果となったとしている。そして、資産売却については、 25年度までに「不動産、有価証券及び子会社・関連会社7074億円の売却」を目標とし
ており、実績額は8122億円となっていて、東京電力は目標を達成したとしている。こ のうち、子会社・関連会社については、個別評価額の合計1301億円を売却目標として おり、26年3月末までの売却実績額は1457億円となっていて目標を達成したとしている が、売却に当たり、東京電力が売却した子会社に一定期間継続して事務を委託するこ とを約束していて、コスト削減に資するかどうか引き続き注視する必要のある事例が
見受けられた。
収支見通しの状況についてみると、東京電力は、柏崎刈羽原発の6、7号機が26年7月 から再稼働することを前提として新・総合特別事業計画の収支見通しを作成している が、6、7号機の再稼働は当該見通しのとおりにはなっていない。25年度の原油価格及 び為替レートを前提とした6、7号機がいずれも再稼働しなかった場合の営業費用への 影響は、東京電力の想定を前提とすれば1年間で2880億円から4320億円程度の増になる。
東京電力が行う汚染水問題への対策等についてみると、東京電力は、汚染水に含ま れる放射性物質を除去するなどのために汚染水処理設備等を設置しているが、汚染水 処理は、技術的難易度が高く、汚染水処理設備等を構成する装置等の中には、除染装 置、蒸発濃縮装置、地下貯水槽及びフランジボルト締めタイプの中低濃度タンクのよ うに、短期間で運転や使用を停止した装置等もあった。
汚染水対策に要した費用のうち毎年度経常的に発生する修繕費、委託費等(以下「安 定化維持費用」という。)に係る支出額は、24年度293億余円、25年度249億余円、計
543億余円となっている。また、廃炉・汚染水対策の研究開発費に係る支出額は、23年 度1億余円、24年度8億余円、25年度15億余円、計25億余円となっている。そして、こ れら安定化維持費用及び研究開発費を除いた廃炉・汚染水対策に要する費用として22 年度から25年度までに対価を支払うなどした額は、計3455億余円となっている。
廃炉・汚染水対策に対する国の支援等についてみると、国は、福島第一原発の廃炉
・汚染水対策に関する①研究開発等、②研究施設の整備等及び③実証事業に対して、 計1892億余円の財政措置を講じている。そして、研究開発等について、経済産業省は、 廃炉・汚染水対策事業費補助金により基金設置法人に造成させた廃炉・汚染水対策基 金を活用して廃炉・汚染水対策事業を実施している。同事業の実施に当たり、基金設 置法人は、補助金の交付に係る業務を行う事務局法人による事業の実施に関して指導 監督を行うこととなっており、原子力分野に関する専門的な知識を有する者を在籍さ せたり、当該有識者から助言を受けられる体制を整えたりしておく必要がある。また、
基金補助事業者の選定において競争原理が働きにくい状況にあることを踏まえた上で、 事務局法人においては、事業費が適正であるかを十分に確認する必要がある。
そして、27年報告における検査の結果に対する所見は、次のとおりである。
東京電力に係る原子力損害の賠償に関する国の支援は、原賠法の枠組みの下で、国
民負担の極小化を図ることを基本として、機構が東京電力に対して出資したり、原子
力損害の賠償のための資金を交付したりすることなどにより、多額の財政資金を投じ
て実施されている。
25年閣議決定においては、原子力災害から一日も早く福島を再生させることは国の
責務であるとして、福島の再生のために必要な全ての課題に対して、国民の理解と協
力を得ながら取り組んでいく姿勢が明らかにされ、除染・中間貯蔵施設費用等に関す
る具体的な対応として、国と東京電力の役割分担が明確にされた。そして、25年閣議
決定において明らかにされた国の方針や、東京電力を取り巻く事業環境の変化を踏ま
えて総特の内容を大幅に見直した新・総特が策定され、東京電力は、「責任と競争」
の両立を基本に、賠償、廃炉、福島復興等の責務を全うしていくとともに、電力の安
ことなどが示された。あわせて、機構法が改正され、機構に賠償支援業務に加えて廃
炉等支援業務が追加された。
新・総特における要賠償額の見通しは5兆4214億余円(第2次新・総特)となり、賠
償の進捗や対象期間の延長に伴い引き続き賠償見積額の増加が見込まれるほか、25年
閣議決定においては、除染費用、中間貯蔵施設費用がそれぞれ約2.5兆円、約1.1兆円
と見込まれている。国から機構に対しては、原子力損害の賠償に必要な資金を東京電
力に交付するために累計で9兆円の国債が交付されており、26年12月までに原子力損
害を受けた者に支払われた賠償金の額は4兆5656億余円となっている。
東京電力は、電気料金改定等による収入の増加やコスト削減の実施による費用の抑
制等により、25年度決算で機構から資金援助を受けるようになって以降初めて当期純
利益を計上するなど財務状況について一定の改善がなされ、同年度分に係る特別負担
金500億円を納付するに至った。一方、原子力発電所の停止に伴う燃料費の増大等の
影響により、機構に一般負担金を納付する他の原子力事業者の中には複数年にわたり
経常収支が赤字となっているものがあることや、運転期間が40年を超える原子炉の取
扱いによっては、25年度分の一般負担金年度総額1630億円と同程度の金額を今後も維
持することができるかについて注視する必要がある。
そして、このような状況の中で、25年閣議決定において、機構が保有する東京電力
の株式を売却し、それにより生ずる利益の国庫納付により除染費用相当分等の回収を
図るとされたことから、東京電力の株式をできる限り早期に、かつ、高い価格で売却
することは、国民負担の極小化や、機構法の本来の仕組み、すなわち、原子力事業者
から納付される一般負担金により機構に積立てを行い、原子力事故が発生した後の資
金援助の財源にするという仕組みが早期に機能することに大きく貢献する。しかし、
株式を高い価格で売却できるようにするために、財務状況の更なる改善、内部留保の
蓄積、キャッシュ・フローの確保等により企業価値の向上に東京電力が取り組むこと
は当然としても、その取組は決して容易ではなく、また、実際の売却価格は様々な要
素により決まるもので、高い価格での売却は確実なものではない。
したがって、上記のような点を踏まえた上で、今後、文部科学省は次の(1)アの点
に、経済産業省は次の(1)イの点にそれぞれ留意して原子力損害の賠償に関する支援
等を実施し、機構は次の(2)の点に留意して資金援助業務等を実施し、また、東京電
必要がある。
(1) 原子力損害の賠償に関する国の支援等の状況
ア 文部科学省において、
(ア) ADRセンターにおける和解の仲介の申立てに係る未処理件数が大幅に減少
するには、なお時間を要すると考えられることから、処理の促進のために引き
続きADRセンターの体制整備等に努める。
(イ) 原賠法の改正等の抜本的な見直しなどの必要な措置を講ずるまでには至って
いないことから、原子力損害の賠償に係る制度における国の責任の在り方につ
いて検討を加えるなど機構法附則において求められている事項を早期に達成で
きるよう努める。
イ 経済産業省において、
(ア) 一般負担金年度総額や東京電力の特別負担金額の認可に当たっては、「国民
負担の極小化を図ることを基本とする」という考え方を踏まえて、国が機構を
通じて交付した資金の確実な回収と東京電力の企業価値の向上の双方に十分に
配慮する。また、機構が特別負担金の額を主務省令で定める基準に従って定め
たことについて国民に対して十分に説明していくよう、内閣府と共に機構を監
督する。
(イ) 廃炉・汚染水対策において、基金補助事業者の選定において競争原理が働き
にくい状況にある場合には、事務局法人に事業費が適正であるかどうかを十分
に確認させるようにする。
(2) 機構による資金援助業務の実施状況等
機構において、
ア 東京電力におけるコスト削減等の経営合理化や原子力損害の賠償の実施に関す
るモニタリングを引き続き的確に実施するなどして、引き続き、東京電力による
特別事業計画の確実な履行を支援する。
イ 一般負担金年度総額や東京電力の特別負担金額の検討に当たっては、「国民負
担の極小化を図ることを基本とする」という考え方を踏まえて、国が機構を通じ
て交付した資金の確実な回収と東京電力の企業価値の向上の双方に十分に配慮す
る。また、特別負担金の額が東京電力に対して「経理的基礎を毀損しない範囲で
係る具体的な考え方を、東京電力に係る財務諸表上の計数等、検討に際して考慮
した諸要素を適宜用いるなどして、国民に対して十分に説明する。
(3) 東京電力による原子力損害の賠償その他の特別事業計画の履行状況等
東京電力において、
ア 本賠償未請求者に対する働きかけを継続して、未精算状態を早期に解消する。
賠償金の支払の重複が生ずることのないよう、引き続き、審査体制の強化に取り
組む。
イ 経営の合理化に向けて、実質的な効果のあるコスト削減により一層取り組むと
ともに、売却に至っていない資産の売却に引き続き取り組む。子会社の売却に当
たっては、一定期間の業務委託を約定した売却が、実質的なコスト削減に資する
かどうか確認する。
ウ 廃炉・汚染水対策において、実証試験と実際の工事の結果が異なった原因を明
確にし、今後の実証試験での条件設定等に活用する。
東京電力の企業価値の向上は、今後、28年度末に機構によって実施される「責任と
競争に関する経営評価」によって検証されることとなっている。また、23年度以降多
額の財政措置が講じられて実施されている廃炉・汚染水対策については、機構に廃炉
等支援業務が追加されており、機構の指導の下で、適切な事業の実施と確実な成果が
求められる。
会計検査院としては、26年度以降に実施された支援等について引き続き検査を実施
して、検査の結果については、上記の28年度末に実施される「責任と競争に関する経
営評価」による検証や廃炉・汚染水対策の実施状況等を踏まえた上で取りまとめが出
3 27年報告以降の動向
(1) 国における東京電力の改革等に関する委員会の設置
23年3月の東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波の際に発生した福島第一原発
の事故(以下「23年原発事故」という。)に伴う賠償、除染、廃炉等の費用が増大す
る中、東京電力は、28年7月に、環境の変化に対応して持続可能な経営を図るための
経営方針として、「激変する環境下における経営方針」を公表した。この中では、被
災者賠償額は当初見込みを既に上回り、除染費用についても上振れの懸念が高まりつ
つあることに加えて、廃炉の本格化が控えている中、新・総合特別事業計画や25年閣
議決定において国と東京電力との費用分担の前提としていた見通しの金額が変わりつ
つあるとし、このような厳しい経営環境が放置されたまま経営改革を進めても、企業
価値の創出が不十分となり、機構が保有する東京電力株式の価値が新・総合特別事業
計画で見込んだ売却益(2.5兆円)と出資額(1兆円)の計に達しないこととなりかね
ないなどとしている。そして、東京電力は、自らは経営改革を断行することとする一
方で、当初見込みを上回る賠償費用の負担の在り方や福島第一原発の廃炉の推進に対
する支援、環境整備等について方針を明らかにすることなどを政府に対して求めてい
る。
これを受けて、経済産業省は、東京電力が福島復興と事故収束の責任を果たすため
にどのような経営改革を行うべきかなどについて提言として取りまとめることを目的
として、28年9月に、民間の有識者等を委員とする「東京電力改革・1F問題委員
会」(以下「東電委員会」という。)を設置した。東電委員会は、同年12月20日に開
催した第8回の会議において「東電改革提言」(以下「改革提言」という。)を取り
まとめて同省に提出し、同省は改革提言を同日公表した。
改革提言は、東京電力が福島への責任と電力の低廉かつ安定的な供給を果たすため
に存続を許されているという原点に立ち返り、国と東京電力は何をなすべきかについ
て議論を取りまとめたものとされている。具体的には、①「福島の長期展望と電力市
場の構造変化を見据えた持続可能な仕組みの構築」(必要な資金規模、国と東京電力
の役割分担等)、②「電力市場を巡る環境変化」(全面自由化の開始等)、③「東電
改革、2011年の緊急体制から本格的体制を築く」(共同事業体の設立等)、④「実行
体制を早期に確立、早期着手を」(次世代への早期権限委譲等)等の項目の下に、取
福島第一原発の廃炉に要する資金については、有識者から得た見解の一例に基づけば、
東京電力が見込んでいる2兆円に最大6兆円程度を追加した最大8兆円程度が必要にな
るとされ、23年原発事故に関連して確保すべき廃炉、賠償、除染、中間貯蔵等の資金
の総額は約22兆円になるとの見通しが示されている。そして、この確保すべき資金を
約22兆円と見込んだ上で、東京電力が16兆円、他の原子力事業者が4兆円、新規参入
した小売電気事業者(以下「新電力」という。)が0.24兆円、国が2兆円を負担する
との試算が示されている。この試算は、23年原発事故を契機に顕在化した電力の広域
融通の限界や料金水準の高騰等の課題を克服するための電気事業制度改革( (5)「電
力システム改革」(19ページ)参照)に向けた様々な施策の在り方を検討することを
目的として、経済産業省の審議会である総合資源エネルギー調査会に28年9月に設置
された「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」(以下「貫徹委員会」とい
う。)における議論を踏まえたものである。
貫徹委員会の議論では、28年4月に電気の小売が自由化され、原子力事業者ではな
く新電力との間で電気需給契約を締結することにより結果として一般負担金を負担し
ないこととなる電気の使用者が増えることから、機構法が成立する前に全ての電気の
使用者が等しく負担すべきだった賠償の備えについては、新電力と契約した使用者を
含めた全ての電気の使用者に負担を求める必要があるとしている(49、50ページ参
照)。そして、その回収方法については、電気事業法(昭和39年法律第170号)の改
正により32年4月から送配電事業と小売電気事業及び発電事業との兼業が禁止される
ことに伴い全面的に導入され、特定の供給区域内の全ての電気の使用者に一律に負担
を求めることができる託送料金の仕組みを利用することが適当であるとしている。 (注1)
(注1) 託送料金の仕組み 託送料金とは、小売電気事業者が送配電事業者の
送配電網を利用して電気の使用者に電力を供給する際に送配電事業 者に支払う料金をいう。送配電事業は電気の小売自由化後も地域独 占が残り市場競争が存在しないことから、国は、公共の利益の増進 に支障があると認めるときは、電気事業法等に基づき送配電事業者 に対して託送料金の変更申請を行うよう命令することができること となっている。
(2) 原子力災害からの福島復興を一層加速させるための閣議決定
と東京電力の役割分担の明確化等について取り組むべき方向性を明らかにする指針と して25年閣議決定を策定して、復興に向けた取組を進めてきた。そして、27年6月には、
従来の施策を深化させるとともに、事業・生業や生活の再建・自立に向けた取組を拡 充するために25年閣議決定の改訂を行った。この改訂においては、被災者の生活の再 構築や被災事業者の事業再建のためには、生活、産業及び行政が三位一体となった政 策を進める必要があるとして、国・県・民間が一体となって人員や賃金等を手当てし、 被災者等の自立支援策を実施する新たな主体として、官民の合同チームを創設するこ
ととされた。
このように、復興に向けた取組の具体的な進展が見られるものの、その進捗にはい まだばらつきが見られ、避難状態の長期にわたる継続に伴って新たな課題も顕在化し ているとして、政府は、原子力災害からの福島の復興・再生を一層加速していくため に、28年12月20日に「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」を閣議決 定し、必要な対策の追加及び拡充を行うこととした(以下、この閣議決定を「28年閣 議決定」という。)。
28年閣議決定においては、将来的に帰還困難区域の避難指示を全て解除し、復興・ 再生に責任を持って政府一丸となって取り組むとの決意の下、特定復興拠点等の整備 に向けた制度を構築するとしている。また、原子力災害からの復興については引き続 き国が前面に立ってその役割を果たす一方、東京電力が経営改革を行い、自らの責任 を果たさなければ国民の理解を得ることができないとし、復興の進捗と相まって廃炉、
賠償等の事故対応費用の見通しが明らかになりつつあることを踏まえて、改めて国と 東京電力の役割分担を明確化するとしている。
具体的には、①被災者等への賠償は、引き続き東京電力の責任において適切に行う こと、②除染・中間貯蔵施設事業の費用は、復興予算として計上した上で、事業実施 後に環境省等から東京電力に求償すること、③交付国債の償還費用のうち除染費用相 当分は、機構が保有する東京電力株式の売却益の国庫納付により回収を図ること、④
0-1参照)。また、「将来にわたって居住を制限することを原則とした区域」として設 定された帰還困難区域((4)「原子力災害対策本部による避難指示区域の見直し」(1
6ページ)参照)については、28年8月に政府としての従来の方針から一歩踏み出す形 で新たに住民の居住を目指す特定復興拠点を整備する方針が示されたことを踏まえて、 同拠点の整備は東京電力に求償せずに国の負担において行うこととした。さらに、国 が行う新たな環境整備として、賠償については、23年原発事故前には確保されていな かった分の賠償の備え(2.4兆円(49、50ページ参照))についてのみ広く電気の使用
者全体の負担とするために、託送料金の見直し等の必要な制度整備を行い、廃炉・汚 染水対策については、機構に廃炉に関する資金を管理する積立金制度を創設して同制 度に基づく着実な資金管理を行うことなどにより長期にわたる巨額の資金需要に対応 できる体制等を整備して、東京電力による廃炉の実施をより確実なものとすることな どが決定された。
図表0-1 23年原発事故に関連して確保すべき資金の見通し
注(1) 東電委員会の配布資料等を基に作成した。
注(2) 上段は25年閣議決定の金額であり、下段は28年閣議決定の金額である。ただし、28
年閣議決定においては廃炉・汚染水対策の費用が示されていないため、「廃炉・汚染 水」の下段は、改革提言における金額を用いている。
注(3) 交付国債の発行により対応すべき費用のうち除染費用相当額は東京電力株式の売却
益で回収を図ることとされており、売却益に余剰が生じた場合は中間貯蔵施設費用相 当分の回収に用い、不足が生じた場合は国が原子力事業者に納付させる負担金の円滑 な返済の在り方について検討することとされている。
注(4) 廃炉・汚染水対策に係る費用は廃炉等積立金(14ページ参照)の積立て等により東
京電力が確保することとされているが、これとは別に、国が廃炉・汚染水対策に係る 研究開発支援を実施している。
金額 5.4兆円 2.5兆円 1.1兆円 2.0兆円 11.0兆円 ↓(+2. 5兆円) ↓(+1. 5兆円) ↓(+0.5兆円) ↓(+6. 0兆円) ↓(+10. 5兆円)
負担者 7.9兆円 4.0兆円 1.6兆円 8.0兆円 21.5兆円
2.7兆円 2.5兆円 2.0兆円 7.2兆円
↓(+1. 2兆円) ↓(+1. 5兆円)
-
↓(+6. 0兆円) ↓(+8. 7兆円) 3.9兆円 4.0兆円 注(3) 8.0兆円 注(4) 15.9兆円2.7兆円 2.7兆円
↓(+1. 0兆円)
-
-
-
↓(+1. 0兆円)3.7兆円 3.7兆円
-
-
↓(+0. 24兆円)
-
-
-
↓(+0.24兆円)0.24兆円 0.24兆円
1.1兆円 1.1兆円
-
↓(+0.5兆円) ↓(+0. 5兆円)1.6兆円 1.6兆円
(株式売却益) 注(3)
(研究開発支援) 注(4) 他の原子力
事業者
新電力
国
廃炉・汚染水 計
東京電力 項 目
賠償 除染 中間貯蔵
9.0兆円 ↓(+4. 5兆円)
13.5兆円 交付国債の発行により
(3) 機構法の改正
28年閣議決定に基づき、29年5月に、事故炉の廃炉等の適正かつ着実な実施を確保
するために、特別事業計画の認定を受けた原子力事業者が事故炉の廃炉等を実施する 場合(以下、この事業者を「廃炉等実施認定事業者」という。)、廃炉等に必要な資 金を機構に積み立てることを義務付けることなどを内容とする機構法の改正が行われ、 同年10月1日から施行された。
この改正により、機構は毎年度の積立金の額を運営委員会の議決を経て定めて、経
済産業大臣の認可を受けた後に廃炉等実施認定事業者に通知し、廃炉等実施認定事業 者は同額を機構に積み立てなければならないこととされた。なお、経済産業大臣は、 上記の認可に当たり、財務大臣への協議を行わなければならないこととされた。
そして、機構は、経済産業大臣が指定した国債等の有価証券や金融機関への預金等 により積立金を運用して、その利息その他の運用利益金の総額と同額を積立金の利息 として付すこととされた。また、廃炉等実施認定事業者は、廃炉等の実施に必要な資 金として機構から積立金を取り戻すときは、機構と共同して取戻しに関する計画を作
成し、経済産業大臣の承認を受けなければならないこととされた(図表0-2参照。以 下、この積立金を「廃炉等積立金」という。)。
図表0-2 廃炉等積立金制度の概要
①
廃炉等の実施に関する計画の届出②
廃炉等積立金管理業務に関する事業計画書の申請・認可③
積立額の申請・認可④
積立額の通知⑤
積立て⑥
取戻しに関する計画の共同作成⑦
取戻しに関する計画の申請・承認⑧
取戻し⑨
着実な廃炉の実施 事故炉機
構
①
③
④
⑦
⑤
⑧
廃 炉 等 実 施 認 定 事 業 者
⑨
経 済 産 業 大 臣
⑥
廃炉等積立金の額については、機構法において、①廃炉等の実施に関する長期的な 見通しに照らし、廃炉等を適正かつ着実に実施するために十分なものであること及び
②廃炉等実施認定事業者の収支の状況に照らし、電気の安定供給その他の原子炉の運 転等に係る事業の円滑な運営に支障を来し、又は当該事業の利用者に著しい負担を及 ぼすおそれのないものであることが要件とされ、経済産業省令で定める基準に従って 定めなければならないこととされている。そして、経済産業大臣は、廃炉等実施認定 事業者が行う廃炉等の実施状況、廃炉等を実施するために必要な技術に関する研究及
び開発の状況その他の事情に照らして必要と認めるときは、機構に対して廃炉等積立 金の額の変更を行うよう命令することができることとされている。
廃炉等積立金は、機構が廃炉等積立金の額を定めて廃炉等実施認定事業者に通知し、 廃炉等実施認定事業者が機構の事業年度(4月~翌年3月)の終了後3月以内(同年6月 末日まで)に機構に積み立てることとされているが、廃炉等積立金の額の2分の1に相 当する額については、同事業年度終了後6月を経過した日から9月以内(同年10月1日 から12月末日まで)に積み立てることが認められている。そして、機構法の一部を改
正する法律が29年10月から施行されたことにより、30事業年度に積み立てるべき廃炉 等積立金の額が29年度末までに決定される見通しとなっている。
図表0-3 機構法改正後の機構の業務等の概要
(4) 原子力災害対策本部による避難指示区域の見直し
23年原発事故が発生した23年3月11日に、原子力災害対策特別措置法(平成11年法律
第156号。以下「原災法」という。)に基づき、内閣総理大臣から原子力緊急事態宣言
が発せられて、内閣府に原子力災害対策本部が設置された。これ以降、原子力災害対
策本部は原子力緊急事態に係る緊急事態応急対策を推進するために活動を続けており、
原子力災害対策本部長である内閣総理大臣は、原災法に基づき、緊急事態応急対策を
実施すべき区域を定めて、同区域を管轄する市町村長等に対して、避難のための立ち
退き等に係る必要な指示を行っている。
原子力災害対策本部は、23年12月に、11市町村に掛かる従来の避難指示区域につい
(注2) (注3)
て、放射線量を基準として、避難指示解除準備区域、居住制限区域及び帰還困難区域
(注4) (注5) (注6)
の三つの区域に見直すことなどについて基本的な考え方等を示し、国、福島県、市町 ( 廃 炉 )
( 賠 償 )
原 子 力 損害を受けた者 交
付 国 債 の 償 還 請 求
交 付 国 債 の 償 還
国 庫 納 付
廃 炉 等 に 関 す る 報 告
廃 炉 等 実 施 認 定事業 者
東 京 電 力
事 故 炉
資 金 援 助 の 申 込 み
資 金 交 付
一 般 負 担 金 ・ 特 別 負 担 金 の 納 付 株
式 の 引 受 け
株 式 の 発 行
廃 炉 等 に 関 す る 助 言、 指 導 及 び 勧 告
廃 炉 等 積 立 金 の 積 立 て
廃 炉 等 積 立 金 の 取 戻 し
賠 償 の 請 求
賠 償 金 の 支 払
廃 炉 作 業 の 実 施
特 別 事 業 計 画
認 定
(
共 同 で 作 成)
取 戻 しに関する計画 廃 炉 等の実施に
関 す る 計画
(
機 構 を 通 じ て 国 に 届 出)
(
共 同 で 作 成) 承 認 除 染
中 間 貯 蔵 施 設
事 業 の 実 施 事
業 の 実 施
そ の 他の 原 子 力事業者
資 金 援 助 の 申込 みを行 う 原 子 力 事 業 者
賠 償 金 の 支 払 求 償
一 般 負 担 金 の 納 付
事 業 の 実 施 研 究 開 発
支 援
廃 炉 等 積立金管 理業務 に 関 す る事業計画書
作 成
認 可
機 構
村等による協議を経て、25年8月までに上記三つの区域への見直しを行った。
この基本的な考え方等においては、避難指示を解除する条件として、①年間積算線
量が20ミリシーベルト以下となることが確実であることが確認されること、②日常生
活に必須なインフラや生活関連サービスがおおむね復旧し、子どもの生活環境を中心
とする除染作業が十分に進捗すること、並びに③県、市町村及び住民との十分な協議
を行うことが掲げられている。加えて、27年6月に示された25年閣議決定の改訂におい
ては、戻りたいと考えている住民の帰還を可能にすることで故郷での居住の自由を回
復するとともに、真の復興に向けた重要な一歩を踏み出すために、上記三つの条件が
整えば速やかに避難指示を解除する必要があるとして、避難指示解除準備区域及び居
住制限区域について、各市町村の復興計画等も踏まえて遅くとも事故から6年後(29年
3月)までに避難指示を解除できるよう、除染の実施やインフラ及び生活関連サービス
の復旧を加速させるとする政府の方針が明らかにされた。
これらを受けた取組が行われた結果、11市町村のうち町の人口の9割以上を帰還困難
区域の住民が占める双葉郡大熊、双葉両町を除いた9市町村の避難指示解除準備区域及
び居住制限区域については、図表0-4のとおり、29年4月1日までに避難指示が全て解除
された。
(注2) 11市町村 田村、南相馬両市、伊達郡川俣町、双葉郡楢葉、富岡、大
熊、双葉、浪江各町、双葉郡川内、葛尾両村、相馬郡飯舘村
(注3) 従来の避難指示区域 福島第一原発から半径20km圏内の地域及び半径
20km以遠の地域で事故発生から1年以内に積算線量が20ミリシーベル トに達するおそれのある地域
(注4) 避難指示解除準備区域 従来の避難指示区域のうち、空間線量率から
推定された年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実 であると確認された地域。同地域は、当面の間は引き続き避難指示 が継続されるが、復旧・復興のための支援策を迅速に実施し、住民 が帰還できるための環境整備を目指す区域とされている。
(注5) 居住制限区域 従来の避難指示区域のうち、空間線量率から推定され
た年間積算線量が20ミリシーベルトを超えるおそれがあると確認さ れた地域。同地域は、将来的には住民が帰還し、コミュニティを再 建することを目指して、除染を計画的に実施するとともに、早期の 復旧が不可欠な基盤施設の復旧を目指す区域とされている。
(注6) 帰還困難区域 事故後6年間を経過してもなお、空間線量率から推定さ
図表0-4 避難指示区域の見直しの状況
(避難指示区域の見直し又は解除の年月日)
田 村 市 - -
平 成 2 6 年 4月 1 日
楢 葉 町 - -
27 年 9月 5 日 葛 尾 村 -
28 年 6月 12 日
未実施 川 内 村
26 年 10 月 1 日
26 年 10 月 1 日
28 年 6月 1 4 日 南 相 馬 市 -
28 年 7月 12 日
未実施 飯 舘 村 -
29 年 3月 31 日
未実施
川 俣 町 - -
29 年 3月 3 1 日 浪 江 町 -
29 年 3月 31 日
未実施 富 岡 町 -
29 年 4月 1日
未実施 大 熊 町 未実施 未実施 未実施 双 葉 町 未実施 未実施 未実施
平 成 2 6 年 3 月 3 1 日 現 在
2 9 年 4 月 1 日 現 在
市 町 村 名
一 部 見 直 し
一 部 解 除
(5) 電力システム改革
我が国の電気事業は、地域独占と総括原価方式により投資回収を保証する制度の下 (注7)
で民間電力会社が大規模電源の確保と地域への供給保証を実現しつつ、発電や電気の
小売に係る事業において競争の導入や自由化を段階的に実施する制度改革が推進され
てきた。しかし、政府は、東北地方太平洋沖地震や23年原発事故を契機として、多様
な電源確保、広域的な系統運用の拡大、電気料金の上昇傾向の抑制等の面で、従来の
電気事業制度が抱える様々な限界が明らかになったとして、①安定供給の確保、②電
気料金の最大限の抑制及び③電気の使用者の選択肢や事業機会の拡大を目的とした制
度改革に取り組むこととし、25年4月に「電力システムに関する改革方針」を閣議決定
した。これによれば、電力システム改革は、①広域系統運用の拡大、②小売及び発電
の全面自由化並びに③法的分離による送配電部門の中立性の一層の確保を三つの柱と (注8)
して段階的に実施することとされ、各段階で課題克服のための十分な検証を行い、そ
の結果を踏まえた必要な措置を講じながら推進することとされた(図表0-5参照)。
この結果、28年4月1日に電力小売全面自由化が実施され、自由化が先行していた工
場やオフィスビル等の大口の使用者だけでなく、一般の家庭や商店を含む全ての電気
の使用者が自由に電気事業者や料金メニューを選択できるようになった。
(注7) 総括原価方式 事業が効率的に行われた場合に要する総費用に適正な
事業報酬(利潤)を加えた総括原価が総収入と見合うように料金を 設定する方式
(注8) 法的分離 送配電網を発電事業者や電気の小売事業者が公平に利用で
きるようにするために、送配電事業と発電事業及び小売事業との兼 業を禁止して別会社とすること。会社間で資本関係を有することは 排除しないこととされている。
図表0-5 電力システム改革の実施状況
改革の内容 実施予定 実施状況
【第1段階】
広域系統運用機関の設立
平成27年(2015年) を目途に設立
・制度改正に必要な電気事業法の一部を改正する法律が25年 11月13日に成立
・電力広域的運営推進機関が27年4月1日に発足 【第2段階】
電気の小売業への参入の 全面自由化
平成28年(2016年) を目途に実施
・制度改正に必要な電気事業法等の一部を改正する法律が26 年6月11日に成立
・電力小売全面自由化が28年4月1日から開始
【第3段階】
・法的分離による送配電 部門の中立性の一層の 確保
・小売電気料金の規制の 完全撤廃
平成30年から32年 まで (2016年から 2020年まで)を目途 に実施
・制度改正に必要な電気事業法等の一部を改正する法律が27 年6月17日に成立
・送配電部門と発電部門及び小売部門との法的分離を32年4月 1日に施行予定
(6) 東京電力の分社化
26年1月に認定を受けた新・総合特別事業計画においては、東京電力が「責任」と
「競争」の双方を両立させて、両者をグループ内で並行して一体的に展開していくた
めには、グループ全体での「責任貫徹」を堅持しつつ、事業分野別にそれぞれの特性
に応じた最適な経営戦略を適用し、全体の企業価値最大化に貢献することが可能とな
るような企業形態が求められるとして、28年4月を目途に、三つのカンパニー(事業子
会社)及びコーポレート(事業持株会社)から成るホールディングカンパニー制(以
下「HDカンパニー制」という。)に移行するとされていた。
上記を受けて、東京電力は、会社分割の方法によりHDカンパニー制に移行するこ
ととし、「燃料・火力発電事業」「一般送配電事業」及び「小売電気事業」の三つの
事業を新規に設立した三つの事業子会社に承継させることとして、所要の手続を経た
後に、事業子会社の前身となる三つの分割準備会社との間でそれぞれ吸収分割契約を
締結した。そして、27年6月の株主総会で関連議案の承認可決を経た上で、28年3月に
一般送配電事業及び小売電気事業の分割について電気事業法に基づく経済産業大臣の
認可を取得して、同年4月1日からHDカンパニー制に移行した。これに伴い、三つの
分割準備会社は、同日付けで、東京電力フュエル&パワー株式会社(以下「東電F
P」という。)、東京電力パワーグリッド株式会社(以下「東電PG」という。)、
東京電力エナジーパートナー株式会社(以下「東電EP」という。)にそれぞれ名称
を変更した(以下、これら三つの事業子会社を合わせて「3基幹事業会社」という。)。
28年度末現在の東京電力及び3基幹事業会社の概要を示すと、図表0-6のとおりとな
っている。
図表0-6 HDカンパニー制移行後の各社の概要
( 注)東 京電力の 平成28年 度(第 93期)有価証券報告書等を 基に作 成した。 会 社 名
項 目
東京電力ホールディン グス 株式会社( 東 京 電 力 )
東京電力フュエル&パワー 株式会社( 東 電 F P )
東京電力パワーグリッド 株式会社( 東 電 P G )
東京電力エナジーパートナー 株式会社( 東 電 E P )
主 な 業 務 内 容
・ 各基幹事業会社への共通 サービスの提供
・ 原子力発電事業 等
燃料・ 火力発電事業 等 送配電事業 等 小売電気事業 等
資 本 金 1兆4009億余円 300億円 800億円 100億円
4 検査の観点、着眼点、対象及び方法
(1) 検査の観点及び着眼点
東京電力に係る原子力損害の賠償に関する国の支援は、23年5月の関係閣僚会合決定
において、原賠法の枠組みの下で、「国民負担の極小化を図ることを基本として」行
うこととされている。
会計検査院は、27年報告において、26年度以降に実施された支援等について引き続
き検査を実施して、検査の結果については、28年度末に機構によって実施される「責
任と競争に関する経営評価」による検証や機構による指導の下で適切な事業の実施と
確実な成果が求められる廃炉・汚染水対策の実施状況等を踏まえた上で、取りまとめ
が出来次第報告することとした。
また、27年報告後に、28年閣議決定、機構法改正等が行われ、国の負担による特定
復興拠点の整備や廃炉の確実な実施を確保するための廃炉等積立金の創設等、原子力
災害からの福島の復興・再生を一層加速していくための新たな施策が実行に移されて
いる。
そこで、今回の検査においては、「東京電力株式会社に係る原子力損害の賠償に関
する国の支援等の実施状況」に関する各事項について、正確性、合規性、経済性、効
率性、有効性等の観点から、それぞれ次の着眼点により検査を実施した。
① 原子力損害の賠償に関する国の支援等はどのように実施されているか。特に、国
の支援等に係る財政負担等はどのような状況になっているか、財政上の措置以外の
国の支援等はどのような状況になっているか。
② 機構が行う東京電力への資金交付等の資金援助等の業務はどのように実施されて
いるか。機構が東京電力等から納付を受ける負担金の水準はどのように設定されて
いるか、機構が引き受けた東京電力が発行した株式の処分を含めて、機構を通じて
東京電力に交付された資金の回収の見通しはどのようになっているか。機構の決算
はどのような状況になっているか。
③ 原子力損害の賠償に関して、要賠償額の見通しはどのようになっているか、東京
電力による賠償は適正かつ迅速に行われているか。東京電力の事業運営に関して、
経営の合理化のためのコスト削減、資産売却等の方策や事業改革はどのように実施
されているか、財務基盤の強化は図られているか、特別事業計画の作成後の状況の
はどのようになっているか、対策の適正かつ着実な推進が図られているか。東京電
力の決算はどのような状況になっているか。
(2) 検査の対象及び方法
本報告に係る検査に当たっては、内閣府、文部科学省、経済産業省及び機構による
23年原発事故に係る原子力損害の賠償の支援並びに東京電力による特別事業計画の履
行のうち、原則として29年9月末までに実施された支援等を対象とした。
検査の実施に当たっては、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき
提出された計算証明書類、各機関から徴した関係資料、報告等により、専門家の意見
も踏まえつつ、在庁してこれらの分析等を行うとともに、内閣府、文部科学省、経済
産業省、機構、東京電力及び23年原発事故の処理等に関する事務を所掌している環境
省において、関係書類を基に説明を受け、また、国立研究開発法人日本原子力研究開
発機構(以下「JAEA」という。)の福島県内の研究開発拠点、国の交付金や東京
電力の賠償金等を原資として造成された基金による事業を実施する福島県、東京電力
第2 検査の結果
1 原子力損害の賠償に関する国の支援等の状況
国は、原子力損害の賠償に関する様々な支援等を行ってきている。これらの支援等に 係る財政負担等の状況は、図表1-1のとおりであり、国が負担等をした額は、計8兆0504
億余円となっている。
これらのうち、「交付国債の交付」については、国から機構に交付された13兆5000億 円の交付国債の償還を行うことにより、機構が東京電力に交付する資金について国が財 政上の負担をする一方で、各原子力事業者から負担金の納付を受けた機構が、損益計算
の結果生じた利益を国庫に納付することにより、国の負担した資金が実質的に回収され ることになっている。
一方、交付国債の償還のための借入金等に係る利払いに充てるために原子力損害賠償 支援資金(以下「原賠資金」という。)を取り崩す額や、「機構法第68条の規定に基づ
く機構への資金交付」((1)イ(ア)④「機構法第68条の規定に基づく機構への資金交付」 (31ページ)参照)のように、国の負担額が今後も増加するものがある。
また、国は、前記の計8兆0504億余円のほか、福島第一原発の廃炉・汚染水対策に関し て計2242億余円の財政措置を講じている(3(3)イ「国による廃炉・汚染水対策に対する
図表1-1 原子力損害の賠償に関する支援等に係る国の財政負担等の状況 (単位:百万円)
番 記載箇所
項 目 金 額 会 計
号 箇所 ページ
原子力損害賠償補償契約に基づく福島第一原発に係 1(1)
1 120,000 一般会計 25
る補償金 ア(ア)
原子力損害賠償補償契約に基づく福島第二原発に係 1(1)
2 68,926 一般会計 26
る補償金 ア(イ)
(交付国債の交付) (13,500,000) 1(1)
3 <うち東京電力への交付を決定した額> <9,515,777> エネ 特原賠勘定 イ(ア)① 28 う ち平成 29年 12月末 まで に国か ら機 構に償 還済 みの 額 7,549,700
1(1) 29 4 原賠資金のうち29年12月末までに利払いのために取 14,204 一 般会計→エ ネ特 イ(ア)②
り崩した額 原賠勘 定 別図表 3 278
1(1)
5 機構法第68条の規定に基づく機構への資金交付 152,000 一 般会計→促 進勘定 31
イ(ア)④
仮払法による福島県原子力被害応急対策基金の設置 1(1)
6 40,385 一般会計 36
費用 ウ(ア)
23年度:一般会 計
7 福島県民健康管理基金の設置費用 84,162 →促進 勘定 1(1)
24年度:東日本 大震災復 ウ(イ) 38 興特別 会計
23年度:一般会 計 1(2)
8 審査会及びADRセンターの運営等に係る経費 12,393 24年度以 降:東 日本大震 ア(ウ) 45
災復 興特別会 計
9 補償金の支払に先立つ審査、調査等に係る委託費用 70 一般会計 21
10 東京電力の経営・財務の調査に係る委託費用 508 一般会計 25
一 般会計→エ ネ特
11 機構への出資 7,000 25年報告 27
原賠勘 定
12 一般会計からエネ特原賠勘定への繰入れ後、原賠資 1,052 一 般会計→エ ネ特 32
金を介さずに利払いのために支払われた額 原 賠勘定
13 仮払法に基づく仮払金の支払に係る委託費用 18 一般会計 35
計 8,050,423
23年度 2,000,000 (-) 24年度 4,000,000
(1,000,000)
25年度 4,000,000 1(1)
(1,500,000) イ(ア)③ 30
政府保証の限度額 26年度 4,000,000 一般会計
(実際の保証額) (700,000) 2(2)
27年度 4,000,000 ア(ア) 61
(550,000) 28年度 4,000,000
(550,000) 29年度 4,000,000
(700,000)
注(1) 本図表は、平成28年度末までの状況を示している。ただし、番号3及び4は29年12月末までの状況、番号5は平成29年 度予算を含んだ金額である。
注(2) 番号2の項目欄にある「福島第二原発」は、東京電力の福島第二原子力発電所を指す(以下、本報告書において同じ。)。 注(3) 番号3の会計欄及び番号12の項目欄にある「エネ特原賠勘定」は、エネルギー対策特別会計原子力損害賠償支援勘定
を指す(27ページ参照)。
注(4) 番号4及び11の会計欄にある「一般会計→エネ特原賠勘定」は、エネルギー対策特別会計原子力損害賠償支援勘定が 一般会計から資金を受け入れて当該項目に係る支出をしていることを指す。
注(5) 番号5及び7の会計欄にある「一般会計→促進勘定」は、促進勘定が一般会計から資金を受け入れて当該項目に係る 支出をしていることを指す。
注(6) 番号6及び13の項目欄にある「仮払法」は、「平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律」 (平成23年法律第91号)を指す(以下、本報告書において同じ。)。